-25000HITに寄せて-

「どうしても行くんじゃな?」
「はい。」
落ち着いた声でゲルドは答えた。
「まだ魔法使いに対する偏見が消えたわけじゃない。辛い旅になるかも知れんぞ。」
「覚悟しています。」
ゲルドは向かい合った老人をまっすぐ見つめて答えた。
「頑固な奴じゃな。ちょっと待ちなさい。」
老人は奥の部屋へ引っ込むと、一本の色あせた杖を持って戻って来た。
「これを持って行きなさい。わしからの餞別じゃ。…わしの分身のような物じゃ。少しは役に立つじゃろう。」
「ありがとう。」
ゲルドは顔をほころばせて老人から杖を受け取った。

「ラップ様、私、そろそろ出発します。」
ゲルドは荷物を肩に背負って老人に告げた。
「気を付けて行くのだぞ。また土産話をしに来ておくれ。」
ラップが言うと、ゲルドははっとして口を閉ざした。
「多分、もう…此処へは…。」
戸惑いを隠せずうつむくゲルドに、ラップは穏やかに言った。
「そんな事を言うものではないよ。未来というのは、決して定まったものではないのじゃ。いつだって可能性は残っているものなんじゃよ。」
ラップはゲルドのために小屋の扉を開いた。

村はずれの見張り番のいるところまで、二人は連れ立って歩いた。
「待っておるよ。必ず帰っておいで。」
ラップはそう言ってゲルドを見送った。
「ありがとう。……行って参ります。」
ゲルドは深々と頭を下げ、山道を下っていった。

「ラップじいさん、あの娘、じいさんの知り合いかい?」
見張りをしていた村の若者がラップに尋ねた。
「おお。知り合いの孫娘じゃよ。」
「別嬪だなぁ。ラップじいさん、今度俺に紹介してくれないか?」
「ほっほっほ。もちろん良いとも。」
ラップは若者のストレートな発言を笑顔で受け取った。
「じゃがのう…。」
ラップじいさんはゲルドが降りていった山道を見下ろした。
そこにはもうゲルドの姿は見えなかった。

「帰ってくるとは、言い残してくれんかったわ。」

2002.9.10


イラストの背景としては、ありきたりですが。
彼女にはミッシェルさんの元を訪れて欲しい…という願望が書かせました。
それと、何か彼女の手元に二人の交流の痕跡を残したいと……これも願望ですね。

問題は、あの杖。
パッケージには、手の込んだ細工の、槍みたいな長い杖が描かれていますよね。
ゲルドが持つにしても、クリスが持つにしても。
けど、途中でモリスンが杖見て言うじゃないですか。
「それはミッシェル・ド・ラップ・ヘブンが持っていた杖だ。」って。
ミッシェルさんがあの細工を施された杖持ってるのって、似合わないと思うんです。
それに忘れじの丘(合ってるか?)でクリスが言ったと思うんですよ。
「杖の形が変わった!」って。
(画面では何も変わっていなかったような覚えもあるんだが…。)
自分としては、持ち歩いていたのはこの変哲もない形の杖で、
ゲルドが自分の意志を封じ込めた時に初めて、あの形に変わったのではないかと思いたいです。
それを、またミッシェルが変哲もない杖の形に封印してクリスに持たせたのではないかと。