Fanfiction 二次創作|Junkkits

カヴァロ解放

day11-2


悲鳴の聞こえる方に進もうとしたマイルとトムソンだが、市民たちは逆に、安全な場所へ避難しようと雪崩れてくる。
とても、辿りつける状況ではなかった。
「僕は高架水路に上がってみます!」
マイルはそうトムソンに伝えると、広場を突っ切ってマシューズベーカリーに飛び込んだ。
「親方さん、通してください!」
マイルは返事も待たずに階段を駆け上がっていく。
二階の作業場の窓から高架水路へ飛び移ったマイルは、大急ぎで市庁舎の正面へ移動した。
高みから見た広場は悲惨な状況だった。
市庁舎前は群集が逃げ惑い、所々に石畳がぽっかりと姿を現していた。
そこに、逃げ遅れた市民が倒れていたのだ。
ヌメロス兵は一旦仲間から離れても、また元の輪に合流していた。
上から見ると、ぐるりと輪になってひとつの方向へ進んで行くようだった。
『一体どこへ行くつもりなんだろう…?』
マイルは眉を寄せた。

そのとき、真下の広場で剣のぶつかる派手な音が響いた。
「みんな!」
ヌメロス兵の背後から、ロッコたちが参戦したのだ。
きらりと兵士の持った剣が光った。
ハッとしてマイルは空を見た。
いつの間にか朝日が昇って街を照らし始めていた。
「ヌメロス兵士の馬鹿野郎!市民に手を上げるな!!」
大声で叫んでいるのはグレイだった。
レイチェルが、倒れている市民に駆け寄った。
シャオがそれを守って周囲に睨みを利かせている。
マイルの目はアヴィンを探した。
数人の兵士を相手に孤軍奮闘しているアヴィンの姿を見つけたとき、マイルは半ば無意識にブーメランを放っていた。
「オールアタック!」
ブーメランは小気味良く飛んでいき、すべてのターゲットに命中した。
アヴィンが顔を上げ、水路の上のマイルを見つけると軽く手を振った。

「い、痛い、痛いっ。」
「ううう・・・。」
ヌメロス兵の通った後には剣で傷付けられた人が何人もいた。
皆、地面に倒れたり、うずくまって痛みをこらえている。
「ひどいわ……」
レイチェルが絶句した。
彼女は兵を追うのをやめ、けが人の側にしゃがみこんだ。
チアボイスだけでは回復しきれなかった。
レイチェルは道具袋を開け、体力を回復させる薬のうち、最も強力な物を取り出して治療した。
「大丈夫。今、旅芸人の秘蔵薬を使ってあげるからね。これさえ使えばこんな傷、痛くも何ともないわ。」
「あ、ああ…。」
額に脂汗を浮かべて市民が答えた。

「ひどい…、街の人を傷つけたのか。」
レイチェルが顔をあげると、アヴィンが顔をしかめていた。
「ゼノン司令め、今まで善人の振りをしていたが、とうとう尻尾を出したな。」
ロッコもやって来て言った。
「レイチェル、シャオさん、街の人たちの手当てをしてやってくれ。奴らは俺たちが追う。」
ロッコが言うと、レイチェルはしっかと頷いた。
「わかったわ。気を付けて。」


「ええい、市民どもめ、いいかげん逃げ出せばよいものを。」
「彼らも必死の様子です。」
「すぐに道を開きます。閣下、なにとぞしばらくご辛抱を!」
ゼノン司令を取り囲んだ直属の兵士たちは、向かってくる市民たちにためらいなく剣を振るっていた。
恐れをなして道を開くと思いきや、カヴァロの市民は意外にも、勇猛果敢に飛び込んでくる。
外回りを囲んでいる一般兵は威嚇するだけの者が多いが、さらに中へ踏み込んだ者には冷徹な護衛兵の一撃が待っていた。

アヴィンとロッコは、すぐにヌメロス兵の通った場所に出た。
いや、そこだけがあまりに悲惨な状況になっていたので、彼らの通った道だと気が付いたのだ。
重苦しい表情をした人々が、倒れた仲間を必死に励ましている。
「マイル! この人たちを助けられないか!」
アヴィンが高架水路の上のマイルに呼びかけた。
マイルは倒れている人たちを一瞥すると、ブーメランを肩に背負った。
「わかった、今行く。」
マイルは高架水路の縁に乗った。
高さを目測し、そのまま下の広場へ身を躍らせる。
片手を付いて軽やかに着地したマイルは、立ち上がると周囲の様子を確かめて眉をひそめた。
水路の上では気付かなかった、生臭い血の匂いが立ち込めていた。
「ひどい…。」
マイルは、ブーメランを頭上に掲げた。
「ラプレア!」
マイルは自身の持つ最高の全体回復魔法を唱えた。
それから一番近くのけが人に駆け寄り、様子を伺った。
けが人を介抱していた市民たちが、期待のこもった目でマイルを見た。
「どうだ?」
アヴィンが駆け寄ってきて後ろから覗き込んだ。
マイルは立ち上がった。
「もう一回、掛けてみる。アヴィン、ロッコさん、ここはいいからヌメロス兵を追い駆けて。彼らを止めないと、犠牲が増えるだけだよ。」
「わかった。」
「任せとけ。」
二人が同時に言った。
「まるでためらいがないような切り口だよ、十分気を付けて。僕もすぐに追い駆けるから。」

「ヌメロス兵め、どこへ行く気なんだ?」
一方、ヌメロス兵と戦っていたグレイたちは、いつの間にか広場の中央を過ぎ、国際劇場の側へと進んできていた。
「奴ら、国際劇場を狙っているのか?」
ドルクが言った。
「でも、兵士の真ん中にゼノン司令がいます。まるで、司令を守って脱出しているように見えるんですが。」
ラテルが答えた。
「あんまり自分に都合よく考えない方が良いぜ、坊ちゃんよ。」
ドルクがラテルをからかった。
「じゃあ、どう説明するって言うんです?国際劇場に立てこもるって言うんですか?」
ラテルが真っ赤になってまくし立てる。
「あっちの出方を見たいな。おい、下がれって!怪我をするぞ!」
グレイが自分たちの前へ飛び出した市民の首根っこを捕まえて後ろへ下がらせた。
「ヌメロス兵は見境ないんだぞ。命を粗末にするんじゃねえ!」
ドルクも自分たちと一緒に戦っている市民たちに叫んだ。
鎌やら、暖炉の火掻き棒やら、一応武器になりそうな物を携えてはいるが、剣から身を避ける事も知らない人々である。
彼らを護り、さらにヌメロス兵の行動を押さえるのは至難の業だった。

「アヴィン、ヌメロスの狙いは何だと思う?」
ヌメロス兵を追いながらロッコが聞いた。
「狙い?…そうだな、市庁舎はあきらめたようだから、脱出、じゃないのか?」
「…そう思うか。」
アヴィンが答えると、ロッコは考え込んた。
「今まではカヴァロを守るって言い張ってきたのに、いきなり攻撃してきたんだ。このままカヴァロに居座るつもりなら、うそを付き通すんじゃないか。」
アヴィンは思ったままを言った。
「俺もそう思いたいんだけどな。ゼノン司令というのは、今の皇帝の即位の時に徹底して反対勢力を弾圧した人なんだ。…単純すぎるんだよ。」
ロッコは納得出来ない様子だった。

「追い付いたぞ、ゼノン司令!一体何をするつもりなんだ!」
ヌメロス兵士たちを視界に捕らえると、ロッコは大声で叫んで突っ込んでいった。
「ロッコ!」
反対側で戦っていたラテルたちから歓声が上がった。
「これ以上、カヴァロで好きな事はさせないぞ。出て行ってもらう!」
ロッコは、ゼノン司令のいる人の輪の中心に剣をピタリと向けて言った。
「へ、言いやがった。俺たちも後戻りできないな。」
ドルクがつぶやいた。
「望むところだ。」
ラテルも顔を紅潮させている。
グレイがロッコの隣へ移動した。
「一人でかっこ付けてるんじゃねえよ。こいつら、何するつもりなのか見当がつかねえ。」
「うん、俺もわからない。でも、俺たちがやる事は一つだ。」
ヌメロス兵が、中央にいるゼノン司令を守るように人の輪の間隔を縮めた。
ロッコは剣を構えなおした。
「ロッコ、いいぞ!」
背後からアヴィンが叫んだ。
「みんな、伏せろ!」
間髪を入れずにロッコが叫んだ。
「エアリアル・ラブリス!」
アヴィンはヌメロス軍に狙いを定めて魔法を放った。
風が巻き、ヌメロスの兵士たちを宙に踊らせた。

重い鎧が地面にぶつかる音が響いた。
ヌメロス兵は寄り合っていた輪を崩し、バラバラになっていた。
「今だ、取り押さえろ!武装を奪うんだ!」
ロッコが大声で言った。
周囲で成り行きを見守っていた市民がすぐに反応した。
一人の兵士に大勢の市民が飛び掛り、剣を奪い、兜を奪った。
逃げ出す兵士もいた。
座り込んだまま、されるがままになって放心している兵士もいた。
「起きろ!集まれ!」
ヌメロス兵の一人が仲間に叫んでいた。
その声に自分を取り戻した兵士は、またゼノン司令を取り囲んで人垣を築いていく。
「ワリスだ。厄介な奴が残ったな。」
グレイが叫んでいるヌメロス兵を見て、唸るように言った。
ドルクは無言でワリスを睨みつけていた。

一回り小さくなったヌメロス軍は、勢いの付いた市民たちに取り囲まれた。
「司令。」
側近の一人がゼノン司令を伺った。
「潮時だな。」
ゼノン司令も頷いた。
司令はワリスを呼び付けた。
「我々は別行動を取る。おまえたちはここに残って奴らを惹きつけろ。」
「はっ!」
「わしがカヴァロを出たら、おまえたちも市庁舎へ撤退せよ。新たな兵を連れて戻ってくるまで、カヴァロ側の誘いには乗るな。」
「承知しましたっ。」

「お待たせ。」
アヴィンの隣にマイルが現れた。
「お前、回復役はもういいのか?」
アヴィンはマイルに尋ねた。
「大体のところは回復したよ。ひどい状態の人も多くてね。リストアを随分使った。」
マイルは淡々と話した。
「市庁舎の方はもう戦いが静まったから、今は街の人が手当てをしているんだ。レイチェルもそのうち来ると思うよ。」
「そうか…。」
アヴィンの心が痛む。
街の人たち、無傷では済まなかった。
でも、これ以上の犠牲を出さないようにして、とにかく、勝たなくては。

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