Fanfiction 二次創作|Junkkits

カヴァロ解放

day7-2

「なかなか慎重だね、君の相棒は。」
マイルたちを見送ったバルタザールが、アヴィンに声を掛けた。
「あ、・・ああ。正直な話、俺もマイルがあんな風に食い下がるとは思わなかった。」
アヴィンは内心の動揺を隠し切れなかった。
沼地で四人に会ったことはマイルにも話してあった。それなのにあの言い方はないだろうと思った。
「マイルさんがいてくださって良かったですわ。」
ウェンディがつんとした表情で言った。
「社長も、アヴィンさんも、バルタザールまで、あの人たちの話に乗り気なんですもの。」
「それは私も、危険かもしれないと思うわよ、ウェンディ。でも、この先何日も膠着状態が続くとしたら、こちらは貯えも減る一方でしょう。いずれヌメロスは援軍をよこすでしょうし、まだ睨み合いをしている今のうちに雌雄を決するのは、一つの方法だわ。」
ウェンディのぼやきを耳にして、メリトス女史が言った。
「そうだよ、ウェンディ。カヴァロを占領しただけで、何もしてこなかったのは、援軍を待つためだったかもしれないだろう?彼らが言っていた、木人兵の改良版。あれが本当だとしたら、今危害を加えられていないからと安心していられないよ。」
「でも、歌を聴きに来る兵士たちは、戦いなんか望んでいないわ。みんな、帰りたそうにしているわ。」
「軍人は、心を殺す事を知っているわ、ウェンディ。」
メリトス女史が言った。
部屋に残っていた者たちもハッとしてメリトス女史を見た。
「たとえ一人一人が戦いをいやだと思っていても、命令一つで任務を実行してしまうものなの。ヌメロス兵たちはあまり訓練されていないようだけど、甘く見てはいけないわ。」
「それでは、どうすればいいの?命令を出している人がいけないの?」
「ウェンディ…。あなたの気持ちはよくわかるわ。でも、今は街の人を守る事を第一に考えないといけないのよ。」
「みんなを危険にさらしたら、守る事にはならないわ。」
ウェンディは両手を揉み絞った。
誰も、彼女に答える事が出来なかった。

一方、マイルとスタンリーは、パルマン隊の四人を劇場の入り口で見送った。
四人の姿が街中に消えると、スタンリーが言った。
「あんた、なかなか辛口だね。」
「そうかな? 僕は普通に話したつもりだけど?」
マイルが答えた。
「十分辛らつだったと思うぜ。でも安心したよ。」
「安心・・・どういう事?」
「ああ。昨日、あのロッコって奴が来た時にな、アヴィンの事を名指ししていたんだ。一体どこで会っていたのかと思ったよ。あいつがヌメロスの奴だってすぐにわかったからな。だから、今日はアヴィンとあんたの事も見てた。もし奴らの言うことに賛成するようだったら、あんたたちも疑ってかからなきゃいけないと思ってた。だから安心したのさ。少なくとも、あんたは奴らと初対面なんだな。」
「そういうことか。アヴィンがどうして知り合いなのかはわからないけど、僕は今日初めて会ったよ。見かけたことはあったけれどね。」
マイルは答えた。沼地のことは話さない方が良いだろうと考えた。
「本当に見てたのか?」
スタンリーは驚いた様子で言った。
「うん、カヴァロから出られなくなって、街をぶらぶらしていた時にね。いつもあの白いドレスの女の人を追いかけていた。」
マイルは慎重に答えた。この街を探っていたから気が付いた事だ。だがそれをスタンリーに悟られてはいけない。
「すごい観察力だな。」
「どんな事でも押さえておくと、いざという時に役立つんだよ。」
マイルは照れて言い訳をした。スタンリーも二ヤッと笑った。
「連中、信用できると思うか?」
「まだなんとも。でも、木人兵がまた攻めてくる話が事実だとしたら、たとえ騙されたとしても今起たないと・・。その点ではアヴィンと僕は意見が一緒かな。」
「十分考えられることだからな。エキュルのロゼットの人形はとても精密なんだ。ヌメロスなんかに真似できるとは思えないが、もし本当にロゼットの技術を盗まれたら、大変なことになる。」

二人が二階に戻ろうとすると、上からバラバラと人が降りてきた。
会議に参加したマシューやウェンディたちだった。
「何だ、お開きか。」
スタンリーがぼやいた。
「上には市長とメリトスさんだけですよ。」
バルタザールがすれ違いざまにささやいていった。
「それじゃ、見張りに戻ろうか。手薄なのに気付かれないうちに。」
マイルがスタンリーに言った。
「そうだな、皆に今の会議の話をしてやりたいしな。」
スタンリーもそう言って、二人は階段を降りはじめた。
「マイル、ちょっと。」
二人の背後から、思いつめた声がした。
硬い顔をして、アヴィンがマイルを見ていた。

「どうしたんだアヴィン、そんな顔して。」
スタンリーが先に言った。
「何か、気になることでもあったのかい?」
マイルは思わずスタンリーを見た。彼は、アヴィンの疑いを解いていない。
『どうしよう…。ここで僕たちの信頼関係が崩れたら一大事だ。』
「マイルに用があるんだ。」
アヴィンが言った。
マイルはそっとため息をついた。アヴィンは全然気付いちゃいない。
「わかった、屋上に行こうか。スタンリーさん、悪いけど、先に戻っていてくれるかな。みんなが待っているだろうし。」
「しょうがないな。早く来てくれよ。」
スタンリーは残念だという顔をした。マイルへの信頼も、崩れたかもしれなかった。
「うん。すぐに済ませるから。」
マイルはしっかとスタンリーを見て言った。僕を信じてくれと、願いを込めて。

「何であんな事言ったんだよ。せっかく皆がやる気になっていたのに。」
国際劇場の屋上に上がると、アヴィンはさっそくこぼしはじめた。
「あのね、アヴィン。僕はあの場の雰囲気が一つにまとまりそうだからといって、自分の感じたことを曲げるつもりはなかっただけ。たくさんの人の命を預かるかもしれないんだよ。慎重になっても良いだろう?」
「ロッコたちと俺が会ったって、昨日話したじゃないか。あんな言い方したら失礼だろう。」
「アヴィンはたった一度会っただけで、あの四人の事を信頼出来たの?」
マイルはついきつい口調になった。
「…ミッシェルさんが一緒にいたからっていうのはなしだよ。今この街で、一緒に肩の荷を背負ってくれるわけじゃないんだから。アヴィン、君一人で、もし万が一の事が起きた場合、収拾がつけられるのかい?」
「そ、それは。…そんなはず…。」
「そんな事有り得ないっていうのは、君の思い込みだよ。もっと冷静に考えてくれなくちゃ。今だって、取り返しがつかない事になっているかもしれない。」
「え?どういう事だ?」
「スタンリーさんは、僕たちが密談していると考えているかもしれないってことだよ。」
「密談って、なんだよそれ。」
「昨日、ロッコがここへ来た時、君の名前を呼んだんだってね。沼地で会ったことは話さずに、適当にごまかしたんだろうけど、しっかり疑われているんだよ。それなのに君ときたら、こんなところで二人で話し合おうって言い出すんだから。」
マイルは両手を腰に当ててアヴィンを睨んだ。
「僕たちが街の人の信頼を失ったら、カヴァロの人たちは誰にも頼らずにヌメロスと対峙しなくちゃいけなくなるんだよ。もっと慎重になってくれよ、アヴィン。」
「う・・・。」
アヴィンは冷や汗をかいていた。
穴があったら隠れてしまいたい気分だった。
「さあ、見張りに戻ろう。話の続きはあっちでやろう。皆の前でね。」
マイルはアヴィンを引っ張るように、階段を降り始めた。


「市長、援助していただいている食料の事なんですが・・・・。」
宿泊組合長が言いにくそうに告げた。
臨時の市長室に、秘書官とメリトス女史を含めて四人きりである。
「うむ?」
デミール市長が先を促すと、メリトスが話を継いだ。
「明日、最後の貯蔵庫を開けます。これも宿泊施設全てに分配すると、せいぜい4.5日分ですわ。そのあとは、毎日市内に持ち込まれる食料だけが頼りになってしまいます。」
「ヌメロスの占領が長引くにつれて、入荷が減っているんです。このままではすぐに足りなくなってしまいます。」
「そんなに切迫しているのか・・・。」
デミール市長は考え込んだ。
「こちらも、尻に火が付いているのだね。」
「出来る限り節約して提供したいと思いますが、何分、食べずにいるわけにはいかないものですから。」
「それはそうだとも。宿泊のお客様にも少しは辛抱していただかねばならないが…、あまり猶予はないということだね。」
「はい、全く情けない限りです。」
「食料が底をついたという市民集会の言い訳、でっち上げるまでも無いようね。このままでは遠からずそういう事態になってしまうわ。」
「市民の皆さんは気付いているのかね?」
「貯蔵に向いたものばかり店に並んでいますからね。仕入れをしている人たちからも情報が流れているでしょうから、心配していると思いますわ。」
「集会どころか、先にパニックが起きかねんな。」
「秩序を保った行動をしないと、ヌメロスの思う壺ですわね。」
「彼らがどういう返事を持ってきてくれるかだな。」
「信用しておいでなのです?市長。」
「うん。信じているよ、メリトスさん。」
「そうですか。貴方がそうおっしゃるなら、きっと裏付けがあるのでしょうね。」
メリトス女史はにっこりと笑った。
「光栄ですな。では、周辺の村に食料の出荷を求める手紙でも書きましょうか。何通が無事にカヴァロの外に運び出されるかわかりませんが。」

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