Junkkits > ゲーム攻略 > ガガーブトリロジー入口 > 疾風のラヴィン
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最初の仕事は、王からの依頼だった。
王家に伝わる秘密の古文書が、盗賊によって盗まれた。
それを取り戻してほしい、と。
掲示板の文字を見て、ラヴィンは鼻をならした。
王家の物が盗まれたのは、確かに一大事かもしれないが、
相手がただの盗賊なら、大して難しい仕事ではない。
このへんでちょっと名を上げて、
冒険者として売り出すのも悪くないな・・・
埃臭い雑踏をかき分け、ラヴィンは都を出た.
街道を外れ、獣が通ったような道をたどり、
盗賊が巣食う洞窟へ。
若いラヴィンの足は軽く、
険しい山も苦にはならない。
あっという間に目標の洞窟についた。
入口をのぞき込むと、
ひんやりとした空気の流れが、
不精に伸ばした髪を左右に散らす。
暴れる前髪のすきまから、黒い空間が見えた。
ラヴィンは小さく頭を振って、
その空間の中に足を踏み入れた。
「小僧ッ!」
ケダモノのような腕で蛮刀を振り上げた盗賊たちが、
両側から襲いかかってくる。
古文書は取り戻したものの、
盗賊たちの追撃にあってしまった。
狭い洞窟の中では、駆けることもままならない。
怒り狂った盗賊たちが、あちこちからわいてきて、
たちまちラヴィンを取り囲んだ。
後退を重ねるうち、とうとう、
ラヴィンの背中は、壁までぴったりと寄せられてしまった。
ケダモノたちが、一歩、また一歩と、距離を縮めてくる。
ギラギラした蛮刀が、ラヴィンの頭に届く位置まで迫った。
振り上げられる刃。
黄色い歯をむき出して笑う盗賊。
残酷な笑い声。
その―刹那。
トン、というかかとの音と共に時が止まった。
壁を蹴ったラヴィンの体が空中に踊る。
時の歯車が再び回り出すと、
盗賊どもが、どうと倒れた。
「待て!」
ラヴィンが空中から舞い降りたとき、
凛とした声が空気を打った。
声の主はランターンを高くかざした。
よどんだ暗闇の中に光の雲が浮かぶ。
あたりの邪気を払うような姿がくっきりと現われた。
絹の黒髪、黒曜石の瞳。
豹の優雅さをたたえて立つ、ひとりの女性。
盗賊のアジトには、およそ似つかわしくない。
「誰だ」
ラヴィンは剣を鞘に納めて訊ねた。
「その古文書をよこしなさい」
黒髪の女性は、白い腕をラヴィンの方に伸ばした。
「この世には知らなくてもいいことがたくさんあるわ。
今、私にその古文書を渡しても、
罪には問われない。
・・・ご苦労さま、ラヴィン。
これは最初から決まっていた、
あなたの役目なのよ」
「誰なんだ、お前は・・・」
ラヴィンは誰に問うでもなく、つぶやいた。
酒場のカウンター。
酔っ払いどもが、けたたましく笑う中で、
ラヴィンの耳には、ただ一つの音しか聞こえていなかった。
洞窟に現われた黒髪の女。
彼女の、弓弦をはじいたように通る声。
・・・ご苦労さま、ラヴィン。また会いましょう・・・
払っても払っても聞こえる幻聴を打ち消すために、
ラヴィンは拳を振り下ろした。
振動で波立つ葡萄酒の中で、
去って行く彼女の姿がゆれた。
俺としたことが、どうして黙って古文書を渡したのか。
冒険者として売り出すチャンスだったのに。
ラヴィンはカウンターにあたり続けた。
全く、くだらない仕事だった。
古文書の一件以来、
運にまでケチがついたのかもしれない。
ラヴィンは荷物を肩に担いで、だらだらと街道を歩いていた。
・・・なんだって、こんな、荷物運びなんか。
・・・こんなもん放り出してやる。
ひょいと荷物を浮かせたとき、
ただならぬ殺気が走った。
音はないが、張り詰めた空気が辺りの木立を乱している。
ラヴィンは本当に荷物を放り出し、走った。
「あ!」
目の前の光景を見て、
ラヴィンは思わず声をあげた。
・・・あの、黒髪の女が倒れている。
指先を小刻みに震わせて。
それは毒に冒された証拠だった。
ラヴィンは彼女に駆け寄り、
こわばる細い体を抱き起こした。
「・・・お願い、あの古文書を取り戻して・・・」
紫色の唇からやっと声が漏れ出る。
弓弦の響きは、もはやない。
「待ってろ、すぐに助けてやる!」
ラヴィンは彼女を抱えて走り出した。
「ルディ。私の名前は、ルディ。」
医師が去った後、黒髪の女性は静かに話を始めた。
「・・・私を襲ったのは、ただの盗賊じゃない。
この国を滅ぼそうとする恐ろしい組織なの。
やつらは禁断の秘術を記した書を手に入れたわ。
あの古文書は魔獣を操る方法を記した書物・・・」
ルディは寝台の上に身を起こした。
「行かなくちゃ。
やつらが魔獣を操るようになったら、この国は・・・
いいえ、この世界は亡びてしまう!」
「待てよ」
ラヴィンはルディの肩に手を置いた。
「ひとりで行くつもりなのか?」
ルティス:(一読後にセリフありました)
ちょっと・・・
『ルディ』って、どういうことよ?
「お前などに・・・お前ごとき者に、
この計画を破られるとは!」
ドルクは、らんらんと光る瞳でラヴィンを見つめた。
髪と髭が逆立ち、握りしめた拳に血管が浮きたつ。
むき出した歯が鋭い牙に変わった!
・・・そして、閃光!
ラヴィンはルディを後ろにかばった。
手を前にかざしながら、必死に閃光の正体を見極める。
ドルクの体が、ゆがみ、波打ち、
大地を揺るがす咆哮が四方に響き渡った。
次にラヴィンが見たものは、もう人間ではない。
魔獣へと姿を換えたドルクだった。
ラヴィンは剣を握りしめた。
・・・そして、すべての悪夢は去った。
ラヴィンの肩には、もう剣を振り上げる力も残っていない。
ドルクの醜悪な屍を後に、ラヴィンとルディは洞窟を出た。
金色の光が二人を出迎える。
「あなたは英雄よ、ラヴィン。」
ルディは、そっとラヴィンの腕を取った。
「・・・まさか。俺は英雄なんかじゃないさ」
「じゃあ、なんだというの?」
ラヴィンはルディの言葉を微笑みで受け止めた。
急に起こった風がラヴィンの髪を乱す。
一瞬、前が見えなくなり、そしてまた風が髪を払った。
「さあ。それはこれから決まるさ。」
ラヴィンは風の吹く方向へ指を示した。
「とりあえず、こっちの方へ行ってみよう。
なにか新しいことを見つけに」
疾風のラヴィン −完−
この作品は「初期版朱紅い雫(日本ファルコム)」の作中小説です。
Windows版の同名の作中小説とはまた趣が違っているかと思います。