ミッシェル・ド・ラップ・ヘブン捏造企画|Junkkits

癒しの館

07

「先生、ラップはまだ10歳です!!」
真っ先に声を上げたのはエリザだった。
「独り立ちさせるなんて、無茶です!」
両手をぎゅっと握り締めて、エリザは訴えた。
ほかの子どもたちのざわめきも一層大きくなった。
無理もない。
14歳までは館に守られていると、誰もが信じているのだ。
わずか10歳で独り立ちという前例が作られれば、これから育つ子どもたちは、いつ自分が館を離れなくてはならないか、不安に思うことだろう。

「ラップ。大丈夫か、ラップ。」
サムがラップの肩を掴んで揺さぶった。
「あ……」
ラップは悪夢から覚めたばかりのような、青ざめた顔つきでサムを見た。
「どうしよう、僕…。」
独り言のように呟く。
「ラップ……。」
サムの表情が歪む。
独り立ちを告げられた子どもに、拒否をする権利はない。
少なくとも、しかるべき年齢で独り立ちをする場合はそうだった。
サムの顔には悲しみが満ちていた。

「ラップ、立ちなさい。」
自分の運命を告げた大人に促されて、ラップはよろよろと立ち上がった。
「待ってください! その子を館から出すなんて! 考え直してもらえませんか!?」
大人たちのテーブルから、抗議の声が上がった。
ラップはハッとしてそちらを見た。
ルイスだった。
ラップには逞しい大人に見えるルイスも、大人たちの中にいると非常に若かった。
周りの大人たちが、たしなめるようにルイスの袖を引くのが見えた。
『心配してくれてるんだ…。』
ラップの目尻が熱くなった。

「その子にとって、館は狭いのだよ。」
聞き慣れない声が、ルイスに返事をした。
部屋中の視線が声の主に注目した。
ラップもその人を見た。
館の主だった。
「館は癒し手を育てる場所だ。しかしその子は別の力を持っている。ここに導く者のいない力だ。」
ラップは館の主をまじまじと見た。
直接話をしたことは一度もない。
一体どうやって主が自分の魔法のことを知ったのだろうと思った。
「この二年間、そなたは自分の力で魔法を磨いてきた。その学びの姿勢は、十分独り立ちに相応しいものだ。」
館の主はラップを見て言った。
ラップは主の言葉に気を引き締め、無意識に背をまっすぐに伸ばした。
「若すぎると言う者も、館に残すべきと言う者もいた。しかし、君に薬師の道を勧めるのは誤りだろうとわしは思う。」
主の一言一言が、ラップの胸に染み込んだ。
この人は全てを知っているんだとラップは思った。
ユベール先生やオズワルド先生が、主に成り代わって全てを見、そして報告しているんだろう。
『僕が、薬師になるのをためらっている事も、わかっているんだ…。』
このまま館に残って望まない道へ進む必要はないと、主は言ってくれているのだ。
それだったら、もう迷う事はない。
「ありがとうございます。」
ラップは主に向けて深く頭を下げた。
「ラップ!」
いくつかの声が、それを思い止まるようにと叫んだ。
ラップは食堂を見渡した。
たくさんの顔、見慣れた顔、殆ど知らない顔、全てが今は、いとおしい顔に見えた。
胸の内から熱いものがこみ上げてきた。
ラップは涙をこらえて返事を返した。
「僕は館を出ます。今までありがとうございました。」

食事はなかなかのどを通らなかった。
館を出ることは後悔しなかったが、この先の生活については次々と不安が頭をもたげてきた。
生きていく場所も食べ物を得る手段も、自分で見つけなくてはならない。
魔法の事だって、新しい先生を紹介してくれるわけではないから、自力で先生を見つけるか、一人で勉強するしかない。
しかも、これから季節は冬になる。
『魔法より、まず生活を何とかしなきゃ。』
下手をしたら、食べ物を手に入れる事さえ難しくなるかも知れなかった。
食欲は沸かなかったが、ラップは目の前の食事を腹に収めることに集中した。

「ラップ、残念なことになってしまったな。」
やっと皿を空にして席を立つと、ユベール薬師から声を掛けられた。
「はい。」
ラップは頷いた。
「せめて14歳まで残して欲しいと願ったんだが、私では力になれなかった。」
ユベール薬師は肩を落とした。
「僕の進む道を示してもらえたんです。不安だけど、後悔しないと思います。」
ラップは答えた。
「そうか。そう考えてくれるなら有り難い。」
ユベール薬師は胸を撫で下ろしたようだった。
「さて、私は放蕩者を探して来なくてはならん。」
ユベール薬師は苦笑いして肩をすくめた。
自分はダットンと同じ立場になったのだと、ラップは気が付いた。
湧き上がる不安はダットンも同じなのだろう。
いや、あらかじめ自分の番だと知っていただけ、ダットンの方が不安は強かったに違いない。
そう思うと、彼の独り立ちにホッとした自分が、恥知らずに感じられた。

ラップはエリザの姿を探した。
館の癒し手に推薦されたことを祝福したいと思ったのだ。
エリザは癒し手の仲間の子どもたちや、ルイスたち館のスタッフに囲まれていた。
人垣の間から見える表情はとても嬉しそうだ。
『今声を掛けるのは邪魔かな。』
ラップはそう考えて食堂を後にした。
一人で歩き出すと、館の中だというのに孤独感が襲ってきた。
ここを離れる、皆と別れるということが、身に染みて感じられた。

収穫祭まで三日あった。
出発は祭の翌日だから、都合四日間は準備の時間がある。
ラップは日々の家事や作業を小さな子どもたちに引き継いだり、身辺の整理をして過ごした。
もっとも、ラップの私物といったら数組の着替えがあるだけだった。
荷物を入れるための布袋を取り出したラップは、ガサガサという感触に袋を覗き込んだ。
出てきたのは一枚の紙だった。
広げると上に手書きでティラスイールと書いてある。
「アロンのくれた地図だ。」
ラップはつぶやいた。
真ん中に癒しの館と書いてあり、丸く印が付いている。
周辺には、いくつか×印が付けてあった。
懐かしい品物だった。
手書きのティラスイールの地形は今見るとずいぶんいい加減だ。
チャノム、ウドル、フュエンテ、アンビッシュ。
四つの国の名前が書き込まれている。
そして余白には、5年前の日付とラップの名前、父親と母親と年上の兄弟が二人くらいあるようだと記されていた。
『家に帰るのは無理かな…。』
ラップはふと思った。
家がどこの国にあったのかさえわからない。
確かアロンは、書いてくれた四つの国のどれかだろうと言っていた。
『探す?』
自分に問いかける。
『探したい…。』
心の奥の方から、甘酸っぱい懐かしさが湧き上がってきた。
かすかに記憶にある庭を見たい。
閉じこもっていた自分の部屋を見たい。
家族がどんな人たちなのか知りたい。
ちゃんとした地図と照らし合わせたいと思い、ラップは紙を持って書庫へ向かった。

書庫では、オズワルドが書き物をしていた。
「先生、僕、館を出ることになりました。」
ラップはオズワルドに告げた。
「そのようだな。」
自分の作業を続けながら、オズワルドは言った。
その口調は普段と全く変わらなかった。
ふと気にかかって、ラップは尋ねてみた。
「…先生は、僕が館を出ることを望まれたのですか?」
「ふむ…。」
オズワルドはちらりとラップを見た。
「ラップ、広い世界を見てきなさい。」
「世界……。」
ラップは呟いた。
「ティラスイールには砂漠も火山もある。人が踏み込んだことのない海や大山脈もある。自分の目で見て、足で歩いて世界を知ることだ。」
「ちょうど地図を見ようと思っていたんです。いろいろな国を歩いてみたくて。」
ラップは書棚の低いところに設えられた引き出しを開けた。
そこには大判の紙が何枚も収められていた。
ラップは一番上の、腕の長さほどもある大きな紙を注意深く持ち上げた。
そっとテーブルに置く。
アロンのくれた紙を広げて、二つの地図を見比べる。
「その紙は何かな?」
横目で見ていたオズワルドが尋ねた。
「僕の生まれた国を予想した地図です。館へ着いたばかりの頃、アロンとダニーが作ってくれました。」
「故郷を探すつもりなのかね?」
オズワルドの声に牽制する響きを感じ取って、ラップは地図から顔を上げた。
「いけない事でしょうか?」
ラップは不安を覚える。
「肉親を探したいと思うのは自然なことだ。ただ、相手が同じ様に思っているかどうかは別の話なのでな。悲しい再会になるやも知れん。それは覚悟しておくべきだ。」
「…そうですね。」
ラップは地図に目を落とした。
オズワルドの指摘は、ラップの胸を痛ませるのに十分だった。
『会いたがっているのは僕だけかも知れない。』
悲しい現実だった。

チャノム、ウドル、フュエンテ…。
アロンの地図ではほんの小さな国に見えたが、テーブルに広げられた地図で見ると、どの国も大きかった。
国と国をつなぐ街道が張り巡らされ、その周辺には多くの町や村があった。
街道から分け入った道も数知れない。
自分の生まれた村を見つけられるだろうか。
ラップは自信が持てなくなった。

「世界を回るつもりなら、シャリネを巡ってみるのはどうかな、ラップ。」
オズワルドが言った。
「シャリネ、ですか?」
ラップは首をかしげた。
「ほれ、館の庭に鏡を置いた建物があっただろう。あれがシャリネだ。」
「ああ、あの。」
ラップは言われて思い出した。
殆ど訪れる人もない建物の中に、埃にまみれていた祭壇があったのだ。
「シャリネを作ったのは魔女だと言われている。何か魔法の参考になるかも知れん。」
「そうなんですか。」
「巡礼者はシャリネを順に巡って最後にここ、オルドスのシャリネにやってくる。」
「オルドスのシャリネ。立派な名前ですね。」
名前とは裏腹に、嵐が来たら崩れそうな古びた建物を思い浮かべて、ラップは笑った。
「名前だけはな。」
オズワルドも笑った。
「お前たちが学んでいた古文書も、元々はシャリネに収められていた物だ。建物の傷みがひどいのでここに移したのだよ。」
オズワルドは書庫を見渡した。
「気が向いたら訪ねてみるといい。確か最初に行くのはフォルティアのはずだ。」
「フォルティア?」
ラップは地図を探した。
フュエンテから砂漠の国ギドナを横断して、さらに北へ行った所にフォルティアの文字が見つかった。
「とても遠いところですね。」
ラップは肩を落とした。
行ってみたいと考えている範囲より、遥かに遠い所だった。
「当分は故郷を探して歩こうと思います。世界を探検するのはその後ですね。」
「そうか。それもよかろう。」
ラップがシャリネ巡りを棚上げすると、オズワルドは相槌を打つように頷いた。

ラップは満足のいくまで地図を眺めると、それを元の引き出しへ収めた。
「では行きます。お話をありがとうございました。」
オズワルドに一礼してきびすを返すと、後ろから声を掛けられた。
「今年、君の魔法には迷いが見えた。」
「え…。」
ラップは立ち止まって振り返った。
オズワルドは相変わらず自分の仕事をしているような姿勢で、こちらを向いてはいなかった。
「館に残れるよう熱心に働きかけてもらったようだが、かえって迷いの源になっていたな。」
ルイスの事を言っているのだとわかった。
「はい。とても迷っていました。」
ラップは正直に答えた。
オズワルドは書き物の手を止めた。
真顔でラップを見る。
「迷いは闇の付け入る隙を生む。あと四年ここに居るより、外に出る方が君の為になると考えた。よく周りを見なさい。付け入ろうとする者に気をつけなさい。自分が半人前だという事を、いつも忘れないようにしなさい。」
「はい。」
ラップはオズワルドの言葉を頭の中で繰り返した。
「それだけが忠告だ。達者でな。」
オズワルドはそう言うと、また自分の作業に戻った。
「はい。ありがとうございます。」
ラップは礼を言うと書庫を後にした。

ダットンは、ずっと厨房に篭っているという噂だった。
彼が部屋へ戻ってきたのは、独り立ちを告げられた晩から丸二日経った夜だった。
ラップやサム、それにレミーはもう眠っていた。
物音で目を覚ましたラップは、寝台に所在無さげに座り込んだダットンを見つけた。
すっかりしょげている様子だった。
「ダットン、寝たら? ちゃんとベッドで眠れるのは明日までだよ。」
ラップが言うと、ダットンはちらりと顔を上げてラップを見た。
「お前も出て行くって聞いたぞ。」
ダットンの声は、今までの横柄な口調とは打って変わっておとなしくなっていた。
「うん…、独り立ちすることになったよ。」
ラップは答えた。

「俺、ここに残りたい……。」
しばらくしてダットンが言った。
嗚咽をこらえているような、悲しみのこもった声だった。
「ここから出て行って、何をして生きていけば良いんだ? 魔法なんか使えたって何の役にも立たないじゃないか!」
ダットンは頭をかきむしった。
「何でこんな事になっちゃったんだよ…。魔法使いってだけで、こんな所に置き去りにされて、ただ働きして!」
「ダットン…。」
同じ立場に立ったラップには、ダットンの焦りも、落胆した今の気持ちもわかる気がした。
ラップは起きあがり、掛け布団をマント代わりに羽織ってダットンの側の床に座り込んだ。

「でも、館のおかげで生きられたよ。」
ラップは言った。
「捨てられたのが山の中だったら、きっと死んでる。そのことは感謝しても良いんじゃない?」
ラップの言葉を聞いて、ダットンは大きく首を横に振った。
「俺はそんな風に考えられない! 悔しい! 許せない! それに、外が…館の外の世界が……怖い……!!」
ダットンの怯えた叫びに、サムが目を覚ました。
「戻ってきたんだ、ダットン。」
サムは布団にくるまったまま声を掛けた。
「ああ…」
ダットンはため息のような返事を返した。
「どこに行ってたか知らないけど、ゆっくり休めよ。」
サムはそれだけ言うと、また眠ってしまった。

『外の世界か。』
確かに、館の中しか知らずに育ってきたとラップは思った。
時折、患者や商人や、子どもを預けに来た人と会うことはあったが、ラップたちが町へ出て行くことはなかった。
「そんなに怖くないよ、きっと。」
ラップはダットンを励ますように言った。
「お前はいいよな。難しい本も読めるし、魔法もたくさん使えるし。俺なんか何もないんだぞ。」
ダットンは少し落ち着いてきたようだ。いつものいちゃもんが出てきた。
ラップはほっと安堵した。
やっぱりダットンはこのくらい強気じゃなくちゃ。
「魔法を使えても、うさぎ一匹仕留められないよ。呪文書の通りに出来るのと、実践で思う通りに使えるのとでは全然違うから。まだ一人前になるのは遠いよ。」
ラップは正直なところを答えた。

「ラップ、お前これからどうするんだよ。」
ダットンはラップを見て尋ねた。
「世界を回ろうと思っているんだ。」
静かにラップは言った。
「僕は自分の生まれた村を知らないんだ。どこにあるか探してみようと思ってる。」
願わくば、家族ともう一度会ってみたい。
一緒に暮らせなくても構わないから。
「俺たちを捨てた奴らだぞ。嫌がられるに決まってるじゃないか。」
ダットンは信じられないという口調で言った。
「…そうかも知れないけど。」
ラップは悲しい気持ちになりながらも言った。
「それでも僕は知りたいんだ。僕が昔生きていた場所や一緒に暮らしていた人たちを。」
ダットンは首を大きく左右に振って、あきれたという様子を見せた。
「せいぜい頑張れよ。あーあ、俺はどうしたら良いんだろう。」
ダットンは大あくびを一つすると、寝台の脇に放り出された寝巻きに手を伸ばした。
『ちょっとは元気になったかな。』
ラップは安心して自分の寝台へ戻った。

収穫祭の翌日。

ラップとダットンは館の門の前で、他の子どもたちに囲まれていた。
二人とも身軽な格好だった。
荷物入れの中には、わずかな着替えと厨房で包んでくれた食料が少し。
着ている服もやがて訪れる寒さをしのげる物ではなかった。

「ああ、間に合った!」
館の扉が開いて、エリザが駆け出してきた。
その後ろにルイスも付いてくる。
ラップはエリザに推薦のお祝いを言ってなかったことを思い出した。
「おめでとう、エリザ。」
ラップが言うと、エリザは信じられないという顔をした。
「何を言っているの。私の事よりあなたよ。ラップ、本当に行ってしまうのね?」
「うん。」
ラップは頷いた。
「ちゃんと生きていけるの?」
「きっと大丈夫だよ。」
確信はなかったが、ラップはあまり心配をしていなかった。
こればかりは習得した数々の攻撃魔法のおかげだった。
「苦しくても魔獣の肉なんか食べてはだめよ。あなたは危険な所に生えてる薬草だって採れるんだから、そういうのを売ればいいのよ。」
「うん。」
加工するのは下手だけど・・・ラップは内心で思った。

エリザは、ポケットから何かを取り出した。
「これをあげる。」
エリザの手にあったのは、真新しい赤いバンダナだった。
「あなたに魔力の補助は要らないでしょうから、行動力を高める魔法を込めてみたの。」
エリザは自分でラップの額にバンダナを巻いてくれた。
額から、守りの力が放たれるのがわかった。
「すごい。強い力だね。」
ラップは言った。
エリザはペロッと舌を出した。
「あなたわかるのね。私の力ではとても足りないから、ルイに手伝ってもらったの。」
ラップは驚いてルイスを見た。
「こんな事しか出来ないが。君の事は本当に残念だ。元気でな、ラップ。」
ルイスは残念そうに言った。
「うん。ありがとう。」
ラップは額のバンダナにそっと触れてみた。
守りの力以上に、暖かく自分を守ってくれそうな気がした。

「ダットン、君にはこちらを。」
ルイスが同じように青い色のバンダナをダットンに差し出した。
「えっ、俺に?」
ルイスを見返して、ダットンは大きく目を見張った。
「ああ。回避力を高める魔法を込めた。危険から逃げられるようにな。」
「あ…あ…、ありがとう、ルイス。」
ダットンはルイスからバンダナを受け取った。
ぎゅっと額に巻く。
「はは…、似合うかな、これ。」
そう呟くダットンの目から、ポロポロと涙があふれ出した。
ルイスも周りの子どもたちも笑顔でそれを見ていた。

「がんばるのよ、ラップ。」
エリザが言った。
「ありがとうエリザ、ルイス、皆。」
ラップは集まった皆をもう一度見回した。
これ以上言葉を重ねても、時が過ぎるだけだとわかった。
不安は拭えない。
それでもラップは、言いようのない高揚感が湧き上がるのを感じた。
今から新しい人生が始まるのだと思えた。

「それじゃ、僕は行きます。皆も元気で。」
ラップはそう告げた。
「元気でね、ダットン。」
男泣きをするダットンに声を掛けて、ラップはひとり門の外へ歩き出した。
「元気でな、ラップ!」
「頑張って!」
サムやほかの子どもたちの声が背中に届いた。
一度ラップは振り返った。
「さようなら!」
門で手を振る皆に、手を振り返した。
それから、ぬかるんだ道をどこまでも、先へ先へと歩いていった。

(2009/11/14)

上に戻る

HOMEに戻る

ミッシェル・ド・ラップ・ヘブン捏造企画のトップに戻る